【集中連載】災害時の女性や子育て中の方々へ② <妊産婦さんや赤ちゃんをお連れの方へ>

Posted by 吉田穂波

女性防災ネットワーク・東京 呼びかけ人、産婦人科医、神奈川県立保健福祉大学教授

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西日本大水害で避難中の皆様へ

このたびの水害では、大事なものを失い、日常生活がおびやかされ、苦難を強いられていることと思います。一日も早い復興をお祈り申し上げます。

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災害は全ての人に同じように影響をもたらすでしょうか?答えはNOです。同じ災害でも、弱い人の方が大きな影響を受けます。災害時要配慮者と呼ばれるこの人々は、支え合う人間関係がないと生きていけない人々です。

妊産婦さんや子ども、高齢者、障がい者をはじめとした災害時に配慮が必要な方々は、その反面、地域と強い結びつきがあり、家族や地域の核になる存在であり、それを医療・保健・福祉の面から総合的に支援することは被災地コミュニティのエンパワメントおよび再生をもたらす効果が高いことが分かっています(吉田、2012)。

ですから、妊娠中、産後、またはお子さんを抱える皆さんは、弱い人ではなく、周囲の力を引き出す人であり、思いやりの心を引き出す人であり、土地の未来を作っていく人々なのです。

妊産婦さんや赤ちゃん連れの親御さんは、多大なストレスがあっても自覚しづらく、また、目が回るほど忙しいこともあって自分たちの症状を言い出せないことがほとんどです。

避難生活が長引くと、こんな症状が出やすい、ということが分かっていますので、下記の「現在の症状(乳児用)」「現在の自覚症状(妊婦用)」に当てはまるものがないかどうか、見てみましょう。

早めに対処すれば軽いうちに手当てできるものがほとんどです。

赤ちゃんとママを守る防災ノート (外部リンク)

*この内容は、以下の助成金を頂いて調査したものです。

厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)「妊産婦・乳幼児を中心とした災害時要援護者の福祉避難所運営を含めた地域連携防災システム開発に関する研究 」報告書(研究代表者:吉田穂波、平成25〜27年度)

<災害後の病気の予防について>

~妊産婦さんへ~

  • 災害時はストレスにより、ふだんよりも血圧が上昇し、妊娠高血圧症候群になりやすいため、寒さをさけ、十分な水分摂取をして、十分に足を伸ばして横になれる場所を確保してもらうことも重要です。また血栓症(エコノミー症候群)もおこしやすいため、こまめに水分をとり体を動かすことも大切です。
  • 妊娠合併症:妊娠期・出産・産後は平時でも精神的な変化の大きい時期だと言えます。その上に被災のショックが重なることで、強い恐怖感や落ち込み、うつ症状を伴うこともあります。子どもを励まそうとするあまり、自分の気持ちを押し込めてしまわず、信頼できる人と話をできる機会を作りましょう。
  • つわり症状や食事の変化により虫歯や歯肉炎などにかかりやすくなります。時間のある時に歯磨きを。
  • 疲れやすく、長時間立ったり、重いものを持つことが難しくなります。炊き出しの列に並ぶ、水汲みをするなどの肉体労働は出来るだけ周囲の人の力を借りましょう。
  • 尿漏れ・痔などの排泄トラブルが起こることもありますので、水分や栄養・食物繊維を可能な範囲で摂るよう心がけましょう。
  • ストレスは妊娠中の健康トラブルの元です。出来るだけ横になり、水分を多く摂るようにしましょう。
  • お腹が大きくなることで体のバランスが変化し、転倒しやすいので、重いものを持っている時や階段の上り下りでは、ゆっくりゆっくり一歩ずつ歩くようにしましょう。

~赤ちゃん連れの方へ~

  • 赤ちゃん返りや夜泣き、乱暴な言動等、災害時に見られる子どもの”異常な行動”は、”非常時における正常な行動”です。大きく受け止め、しっかりと抱きしめてあげてください。同じ話を何度も繰り返したり、災害を再現する”地震ごっこ””津波ごっこ”の遊びをするのは、子どもが子どもなりに災害を受け止め、体験を消化するために必要なプロセスだと言われています。温かく見守りましょう。また、子どもも親を気遣います。平気そうに見える子どもほど、ケアが大切です。

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